是枝裕和監督をはじめとする国際的評価の高いシネアストたちが近年提示してきたのは、作為を排した生々しい人間のリアリティだ。オーディションの場において、彼女が見せた即興の芝居は審査陣の息を呑ませた。用意された台詞をなぞるのではなく、沈黙や視線の揺らぎだけで登場人物の深淵を炙り出す技術。そこに作為的な誇張は一切ない。
キャスティングの決定打となったのは、予定調和を嫌う現場での瞬発力だったという。予定された段取りを鮮やかに裏切り、シーンの温度を一瞬で変えてしまう胆力。名だたる演出家たちが「カメラが回った瞬間に空気が変わる」と口を揃える理由がそこにある。