「貝殻が開いたらすぐに火を止める」――昔から言われてきた当たり前の動作には、実は明確な科学的理由が存在する。はまぐりのタンパク質は65℃を超えたあたりから急速に凝固を始め、80℃を超えると収縮して水分を外へと押し出してしまう。
プロの厨房では、蒸し器やフライパン内部の温度を過剰に上げず、余熱を計算に入れた火入れが行われる。蓋の隙間から蒸気が吹き出し、パカッと貝が開いたその瞬間の「あと10秒」の判断が、身のふっくら感とジューシーさを左右する分かれ道だ。このわずかなタイミングの見極めこそが、家庭の料理を料亭の味へと引き上げる絶対条件と言える。