本作の根底を支えるのは、国際的な評価を確立している是枝裕和監督の緻密な演出眼と、名優・役所広司の圧倒的な存在感だ。二人のタッグが挑むのは、日本古来の様式美を現代的な視点で脱構築する本格時代劇の革新である。
物語は、史実の暗部に鋭いメスを入れる歴史サスペンスの手法を取り入れている。役所広司が演じるのは、体制の綻びを一身に背負いながら冷酷な決断を迫られる実在の重臣。細かな息遣いや沈黙の重み、視線の揺らぎに至るまで、徹底して人間の業を浮き彫りにする。是枝監督特有の静謐な観察眼が、緊迫感あふれる政治闘争の泥沼と見事に噛み合い、観客の心拍数を静かに引き上げていく。