夕刻の街頭で響き渡るあの独特の金切り声には、彼らなりの明確な意図が存在する。鳥類生態学の観点から見れば、ムクドリの発音は単なる騒音ではなく、高度な社会行動の一環だ。繁殖期におけるオスからメスへのアピールである求愛ソングをはじめ、天敵の存在を群れ全体に知らせる緊迫した警戒のシグナル、さらには群れの結束を高める集合の合図など、用途に応じて多彩なバリエーションを使い分けている。
さらに興味深いのは、彼らが持つ驚異的な音真似能力だ。NHKの自然ドキュメンタリー番組『ダーウィンが来た!』などでも紹介された通り、ムクドリは他鳥類の鳴き声を模倣する高い知能を備えている。タカやカラスといった天敵の声を模して周囲を牽制したり、他の鳥のさえずりを真似てなわばりを誇示したりする様子が観察されている。東京大学名誉教授で鳥類生態学の権威である樋口広芳氏の研究によれば、こうした複雑な音声コミュニケーション能力こそが、彼らが過酷な環境で生き残るための強力な武器となっているという。
しかし、人間社会においてこの多種多彩な声は、単なる「うるさいノイズ」へと変貌する。特に夕刻、ねぐらに集まった数百から数千羽の個体が集団で発声する際、音量は80デシベルを超え、電車が通過する高架下並みの凄まじい騒音レベルに達するのだ。