当時、ピクサー・アニメーション・スタジオにとって決定的な挑戦となったのが、フル3DCGアニメーションで「リアルな人間」を主役に据えた長編映画を完成させることだった。当時の技術レベルにおいて、布地の質感や髪のしなやかななびき、複雑な筋肉の動きを表現するのは極めて困難とされていたからだ。
ブラッド・バード監督は妥協のない演出で、ダイナミックなヒーロー・アクションと生々しい人間ドラマを融合させた。スーツの質感や爆発のパーティクル、超能力を駆使したアクロバティックな戦闘シーンは、アニメーション表現の到達点を大きく塗り替えた。完璧ではない父親の葛藤や子育てに追われる母親のリアルな描写は、従来の子供向けアニメの域を完全に脱していた。