塩沢湖の東岸に静かに佇むヴォーリズ建築の傑作、旧朝吹山荘 睡鳩荘。フランス文学者であり作家の朝吹登水子が愛したこの別荘は、昭和初期の華やかなサロン文化を今に伝える貴重な近代建築遺産だ。外観の重厚な佇まいと、湖を見晴らすテラスの開放感が絶妙なコントラストを描いている。
建物内に一歩足を踏み入れれば、磨き込まれた木の床が微かな軋みを立てる。朝吹登水子がサガンやボーヴォワールと交わした知的な対話、そして軽井沢の冷涼な風が吹き抜けるリビングの心地よさ。窓枠に切り取られた塩沢湖の景色は、まるで一枚の完成された絵画のようだ。細部にまで施された意匠に目を凝らしながら、かつてこの場所で紡がれた優雅な時間に思いを馳せずにはいられない。