かつては工事関係者しか足を踏み入れることができなかった漆黒のトンネルや竪坑エレベーター。これらを繋ぐ「黒部宇奈月キャニオンルート」の一般公開が定着した現在、黒部エリアの観光動態は一変した。単にダムの上から景色を眺める時代は終わりを告げ、地下奥深くに眠る産業遺産を体感するインバウンド需要が爆発的に高まっている。
現地を訪れると、外国人旅行客がヘルメットを装着し、静まり返った地下坑道を感嘆の声を上げながら進む姿が日常となっている。「これほど規模が大きく、かつ歴史の重みを感じさせるインフラツアーは世界でも稀だ」と語るフランス人旅行者の言葉が印象的だ。歴史的遺産の価値を現代の体験型観光へと昇華させたこの試みは、地域経済に巨大な波及効果をもたらしている。