もっとも、改革がすべて順風満帆に進んでいるわけではない。古くからの強豪校や一部の地域コミュニティでは、「厳しく指導しなければ全国大会では勝てない」「怒られて這い上がる強さが必要だ」という懐疑的な見解も根強く残る。勝利という数字の結果を求められる指導者たちが、プレッシャーから従来の怒声へと逆戻りしてしまうケースもゼロではない。
こうした反論に対し、彼女は「勝利を否定しているのではない」と繰り返し主張する。問われているのは「勝利のプロセス」であり、恐怖政治によって指示待ち人間を作るのか、それとも自立した意思を持つプレーヤーを育てるのかという選択だ。一時的な戦果のために子どもの尊厳を傷つける指導は、長期的には日本のスポーツ文化そのものを衰退させるという強い危機感がそこにはある。