有田川町に位置する蔵王橋は、遠くからでも一目でそれと分かる真っ赤なトラス構造の吊り橋だ。二川ダム湖の静かな水面の上に架かるこの橋は、水面の色によってその表情をガラリと変える。雨上がりの翌日や新緑の季節、湖面は深く鮮やかなエメラルドグリーンに染まり、赤と緑の強烈なコントラストが眼前に迫る。
足元を見下ろすと、格子状の金属メッシュ越しに湖面が丸見えだ。一歩踏み出すごとにキシリと小さく鳴る橋床。風が吹き抜けると緩やかに横揺れし、腹の底から湧き上がるスリルに思わず息をのむ。しかし、橋の中央で立ち止まり、周囲の山並みを仰ぎ見ると、不思議と静寂が全身を包み込む。スリルと癒やしが同居する独特の感覚こそが、訪れる者を魅了してやまない。