言葉の深層を探るには、まず現場の声に耳を傾けるのが確実だ。言語学・辞書編纂の最前線において、語彙の変化と定着を捉え続ける国立国語研究所の研究資料を紐解くと、「立ち入る」には大別して二つの明確なベクトルが存在することがわかる。
ひとつは「ある場所の中へ入っていく」という物理的な移動。もうひとつは「他人の事情や問題に深く関与する」という抽象的・心理的な介入だ。ユニークな着眼点で知られる『新明解国語辞典』においても、この二つの相違とグラデーションは実に鋭い表現で書き分けられている。単に「入る」のではなく、相手の意志や領分に対する「不可侵の壁を破る」というニュアンスが、この言葉の核心にある。