暦の上で周期的に巡る特定の巡り合わせに対し、これほどまでに強烈な忌避感を抱いてきた国は世界でも珍しい。「気性が激しく、夫の命を縮める」「家庭を焼き尽くす」といった口承は、近世から近代にかけて人々の無意識に深く根づいてきた。だが、その言説に客観的な根拠など一片も存在しない。
現代の視点から見れば荒唐無稽な俗説にすぎない。それにもかかわらず、社会がいかに噂や不安に脆弱であったかを示す証拠として、このテーマは今もメディアや研究者の関心を集め続けている。実態のない不安がいかにして現実の出生動向を歪めてしまったのか。その謎を解く鍵は、日本人の精神史の奥底に潜んでいる。