王室からストリートへ再臨する伝説の柄、洗練を極める着こなし術にまつわる興味深い視点を詳しく紐解きます。

風吹きすさぶ19世紀スコットランドのローランド地方。羊飼いたちが過酷な自然から身を守るために織り上げた分厚いウール生地こそが、この柄の起源だ。階級やクラン(氏族)の縛りを受けない実用着として生まれた無骨な幾何学模様は、やがて思いがけない形で上流階級のサロンへと侵入する。

その扉をこじ開けた立役者が、20世紀きっての洒落者として知られる英国王エドワード8世(後のウィンザー公)だ。厳格な王室のドレスコードを嫌った彼は、この素朴な織物をみずからのワードローブに取り入れ、大胆なスーツとして仕立て直させた。卓越したテキスタイルデザインとしてのポテンシャルを見抜いた彼の審美眼によって、泥臭いワーキングウェアは一夜にして最高峰のダンディズムへと昇華した。