日本のテレビドラマの潮流において、本作が果たした最大の革新は「劇的な悪役を一切登場させない構造」を貫き通した点にある。多くの連続テレビ小説が劇的な対立や波乱万丈の愛憎劇をスパイスにする中、岡田惠和が描いたのは、善意と優しさが緩やかに循環するユートピア的な世界観だった。向島電機の乙女寮で出会った仲間たちや、赤坂あかね坂商店街の住人たち。誰もがそれぞれに小さな葛藤や痛みを抱えながらも、隣人を思いやる心を忘れない。
この徹底したヒューマニズムは、視聴者に「安心感」と「切なさ」を同時に与える効果を生んだ。登場人物の誰もが主役になり得る群像劇としての完成度の高さは、放送終了後も脚本論の模範として語り継がれている。ささやかな善意が積み重なって奇跡のような日常が形作られるプロセスは、見る者の乾いた心に深く染み渡る。