名門オックスフォード大学マートン・カレッジでの研究生活は、決して平坦なものではなかった。与えられたのは特別待遇ではなく、膨大な史料と向き合う孤独なデスクワーク。彬子女王が専攻されたのは日本美術史、とりわけ明治期の海外流出美術品や蒐集家の足跡を辿る地道な調査だった。
大英博物館のバックヤードに潜り込み、埃をかぶった未整理の日本美術コレクションを一点ずつ検証する日々。暗い収蔵庫で何時間も古文書を解読し、海外に渡った名品の来歴を明らかにしていく作業は、執念にも似た情熱がなければ成し遂げられない。女性皇族初の博士(Ph.D.)学位取得という快挙は、こうした妥協のない研究姿勢の賜物である。