終戦後、無念のまま散っていった戦友たちの面影を抱えながら、千氏は裏千家の道を歩み始めた。大日本帝国海軍での凄惨な体験と、茶道が目指す「和敬清寂」の世界。一見すると対極にある二つの世界は、千氏の中でひとつに結びついている。
「一碗からピースフルネスを」――この理念のもと、千氏は世界各国を巡り、要人や市民の前で大服の茶を点て続けてきた。一服のお茶を差し出し、共に味わう時間には、国境も宗教も争いも存在しない。一瞬の命を慈しむ茶の心は、特攻隊として散っていった仲間たちの命を無駄にしないための、生涯をかけた平和の巡礼なのだ。