日本のインド料理界において、かつて主流を占めていたのはバターチキンやコルマに代表される北インド料理だった。カシューナッツペーストや乳製品をふんだんに使い、重厚でリッチなグレービーをナンで味わうスタイルだ。宮廷料理の流れを汲むこのアプローチは、今なお不動の人気を誇る。
一方で、近年のトレンドを牽引しているのが南インド料理の台頭だ。米を主食とし、ココナッツミルクやタマリンドの酸味、カレーリーフの鮮烈な香りを効かせたサラサラとしたスープ状のカレー「ラッサム」や「サンバル」。バナナの葉の上に複数の料理が並ぶ定食「ミールス」を前に、手食で混ぜ合わせながら食べるスタイルは、日本のフーディーたちの間で急速に定着した。地域ごとの個性を理解することで、現在地から選ぶべき一皿の解像度は劇的に上がる。