結論から言えば、手持ちの有彩色絵の具をどう混ぜても白は作れない。この現象の背景にあるのが「減法混色」と呼ばれる光学理論だ。絵の具やインクなどの物質を混ぜ合わせる際、色を重ねれば重ねるほど光の特定の波長が吸収され、結果として目の前に届く光の量は減り、反射率は低下していく。
バウハウスで教鞭を執り現代の色彩学の基礎を築いたヨハネス・イッテンは、色の相互作用と知覚の仕組みを体系化した。彼の理論が示す通り、加法混色(光の混色)においては赤・緑・青の光を重ねると白に近づくのに対し、物質的塗料による減法混色では重ねるほど暗黒へと向かう。絵の具の「白」とは、あらゆる可視光線を満遍なく反射する特殊な微粒子(顔料)が散乱することによって初めて立ち現れる視覚効果なのだ。