「アディエル…」
劇中、激しい爆発に巻き込まれたアディエルを思って絞り出されたあの掠れ声。野崎という男が単なる冷血な捜査官ではないことを証明した象徴的な一瞬だった。バルカの現地住民に対しても分け隔てなく接し、情を注ぐ彼の姿には、かつて大切な者を失った経験があるのではないかと察せられる。
国家を守るという大義名分の裏に隠された、個人的な悔恨と悲しみ。その過酷な心理的背景が阿部寛の重厚な演技によって肉付けされることで、野崎は単なるストーリー進行役を超え、観客が感情移入せずにはいられない生き様を獲得したのだ。