主演を務める役所広司の徹底した役作りは、撮影現場でも大きな話題となった。職人としてのリアルな所作を身につけるため、彼はクランクインの3ヶ月前から実際に老舗の豆腐工房へ毎日通い詰めたという。午前3時の仕込みから作業を始め、大豆の選別や水加減、にがりの打ち方に至るまで、プロの職人と同等の技術を体得した。
現場スタッフの証言によれば、撮影中の役所はカメラが回っていない時間でも職人の佇まいを崩さず、手にはうっすらと大豆の香りが漂っていたという。監督とのディスカッションも熱を帯び、台本にないふとした仕草や沈黙の使い方が、作中の主人公に圧倒的な存在感と哀愁を与えている。