多くの人が誤解しているが、映画館のポップコーンに溶かしバターは使われていない。乳製品であるバターには約16%の水分が含まれており、弾けたコーンにかけると蒸気と水分で表面がしっとり濡れ、カリッとした食感が損なわれてしまうからだ。さらに、バターは焦げやすく高温での加熱に耐えられない。そこで技術的な突破口となったのが、水分を一切含まない植物性油脂に人工的なフレーバーとベータカロテンで黄金色の彩りを加えたフレーバーオイルの存在だ。
この技術の原点は19世紀末にさかのぼる。1885年にチャールズ・クレターズが蒸気駆動式の移動型ポップコーン機を発明したことで、路上の香ばしい香りが街中に広がり、大衆娯楽の象徴となった。その後、20世紀後半にかけて食品加工業の高度化が進むと、トウモロコシ品種改良のパイオニアであるオーヴィル・レッドエンバッハーらが弾け率が高く大粒のコーンを開発。オイルと塩、そしてコーンの調和を追求する技術革新が加速していった。