彼女の原点を語るうえで、劇場という密室空間を外すことはできない。客席と舞台を隔てる目に見えない壁を、声の一音、視線の揺らぎひとつで破壊してしまう強烈なエネルギー。それが彼女の舞台における最大の武器だ。
つかこうへい作品をはじめ、蜷川幸雄演出の重厚な戯曲、あるいは海外の世界的演出家とのコラボレーションに至るまで、彼女が踏んできた場数の多さとその質は突出している。セリフを語るのではない。役の腹の底にあるドロドロとした感情も、洗練された愛のカタチも、すべて自らの肉体を通して濾過し、生の言葉として客席に投げつける。その覚悟に触れたとき、観客は恐怖と感動が入り混じった奇妙な恍惚感を覚えるのだ。