時計の針を1974年4月11日、東京・日大講堂へと巻き戻す。WBC(世界ボクシング評議会)ライト級タイトルマッチ。下馬評を覆し、王者ロドルフォ・ゴンザレスを強烈な左フックから沈めたガッツ石松は、キャンバスに崩れ落ちる王者を背にコーナーポストへ駆け上がり、両手を高々と突き上げた。
日本ボクシングコミッションの重鎮たちや超満員の観客が目撃したその劇的な幕切れを、翌朝のスポーツ紙は「ガッツポーズ」と大々的に報じた。過酷な減量と壮絶な打ち合いを制した男の剥き出しの咆哮。この瞬間こそが、日本人の脳裏に「勝利=両拳を掲げる姿」を決定づけた歴史的転換点であることは疑いようがない。過酷な格闘技の世界において、極限状態から解放された肉体が描いた放物線は、列島全体に強烈なカタルシスを刻み込んだ。