歴史上、最もスキャンダラスで甘美な名曲として語り継がれる『ジュテーム・モア・ノン・プリュ』。セルジュ・ゲンズブールがジェーン・バーキンと共に世に送り出したこの曲は、単なるラヴソングの枠に収まらない異端の構造を持っていた。「ジュテーム(愛している)」という愛の告白に対し、すぐさま「モア・ノン・プリュ(僕も愛していない)」と返答される悲劇的な矛盾。このパラドックスこそが、歌詞の核心だ。
当時のヴァチカン法王庁から即座に非難を浴び、英BBCをはじめ各国の主要ラジオ局で放送禁止処分を受けたのは有名な話だ。だが、禁忌は熱狂を生む。吐息混じりのボーカルと静かに刻まれるベースラインの裏で、言葉は刃のように聴き手の倫理観を切り裂いた。愛を囁きながら拒絶し、永遠を誓いながら破滅を予感させる。ゲンズブールが紡いだのは、幸福な祝祭としての愛ではなく、終わりを孕んだ愛の素顔だった。