画面越しにはどこまでも静寂で優雅に映る『秘湯ロマン』だが、実際のロケ現場は想像を絶する過酷さに満ちている。テレビ番組制作業の最前線で戦う撮影クルーと出演者は、まさに自然の猛威と隣り合わせでカメラを回し続けているのだ。
真冬の東北や信州の秘湯ロケでは、気温が氷点下を下回る雪の中、数時間にわたって撮影が行われることもある。湯から上がった瞬間に髪が凍りつくような厳しい環境下でも、案内人たちはカメラの前で決して震える仕草を見せず、穏やかな笑みをたたえ続ける。湯気の立ち上り方や光の射し込み方ひとつにこだわり、何時間も理想のカットを待ち続ける制作陣の熱量も並大抵ではない。
さらに、脱衣場から浴槽への移動、湯船の中での光の反射に至るまで、繊細な美意識に基づいた計算がなされている。台本に書かれたセリフをなぞるのではなく、湯に身体を沈めた瞬間に溢れ出るリアルな吐息や肌の質感——それら一瞬の奇跡を捉えるために、現場では常にピンと張り詰めた緊張感と、湯の温もりに包まれた温かな連帯感が同居している。