素顔が見えないキャラクターでありながら、鱗滝左近次という人物がこれほどまでに重厚な存在感を放った背景には、名優・大塚芳忠による名演が欠かせない。アニメーションを手掛けたufotableの映像描写と相まって、大塚の声は「天狗の面」に命を吹き込んだ。
低く重厚で威厳に満ちた声筋は、時に炭治郎を容赦なく突き放す厳格な師の佇まいを見せる。だが、その声の奥底には常に弟子たちの無事を祈る切ないまでの温もりが宿っていた。素顔が直接画面に映し出されずとも、大塚芳忠の演技によって、視聴者は面の下にある「泣き出しそうなほど優しい目」を脳裏に自然と描くことができたのである。