長年、人間の同一性を支える柱とされてきたのは「記憶の連続性」だ。朝起きたときの自分が、昨日眠りについた自分と同じであるという確信。だが、最先端の脳科学は、この記憶すらもきわめてあいまいで、容易に再構成可能なデータ群に過ぎないことを明らかにしている。
記憶が書き換え可能であり、細胞が数年単位で入れ替わる存在であるならば、私たちはもともと日々新しい自分へと更新され続けているのではないか。ある神経科学者は「私たちは生まれながらにして絶え間なく変化するプロセスそのものであり、固定された固定物としての自己など最初から存在しない」と指摘する。