物語の主人公・桜木ひなこは、極度のあがり症であり、人前に出ると緊張のあまり案山子(かかし)のように固まってしまうという強烈な癖を持つ。このコミカルで愛おしいキャラクター設定が、作品全体の魅力を決定づけた。ただ可愛いだけではない。動物に好かれるという特技と組み合わせることで、シュールかつ温かい笑いを生み出す独自のエッセンスとなった。
人と話すことが苦手な少女が、下宿先の仲間たちと共に演劇を通じて成長していく物語。三月氏は、ひなこの内面的な葛藤と可愛らしさを、豊かな表情変化で見事に描き出した。無口で固まっている瞬間の静けさと、舞台上で感情を爆発させる瞬間のギャップ。この緻密な感情線こそが、読者の心を掴んで離さない理由だ。