角替和枝さんは、名バイプレイヤーとして映画やテレビドラマで親しまれただけでなく、家庭内でも息子たちにとって最大の理解者であり、最も厳しい観客だった。柄本佑が役者としての道を歩み始めたとき、母が口にしたのは単なる技術指導ではない。「役を演じるのではなく、その人間として現場に立ちなさい」という、表現の本質を突く言葉だった。
アルファエージェンシーに所属し、数々の難役に挑む中でも、母の言葉は常に道標となっていた。失敗を恐れず、役の滑稽さや惨めさすらも愛おしく演じきる独特のスタイルは、角替さんの人間味あふれる生き様から直接受け継いだものだ。二人が交わした何気ない日常の会話の中にこそ、演劇への深い敬意と親子ならではの強い絆が秘められていた。