安野モヨコという鬼才を語る上で欠かせないのが、まったく異なるジャンルで金字塔を打ち立てた2大代表作だ。
『シュガシュガルーン』は、少女たちのハート(心)を奪い合う魔女っ子ファンタジーでありながら、ファッションの洗練度と女心の深層心理を描き切った伝説的作品。可愛いだけでは終わらない歪みや嫉妬、成長の痛みをポップな絵柄で包み込み、世界中の少女たちを虜にした。魔法の道具や衣装のディテールひとつをとっても、彼女の卓越したデザインセンスが凝縮されている。
一方で、吉原の遊郭を舞台にした『さくらん』は、圧倒的なビジュアルショックで読者の息をのませた。吉原の花魁・きよ葉の破天荒な生き様を通じ、過酷な運命に抗う人間の尊厳を力強く描いている。鮮烈な色彩と力強い線画が織りなす情念の世界は、後に映画化されて大きな話題を呼んだ。この2作を並べただけでも、作家としての引き出しの圧倒的な多さに慄然とさせられる。