物語の中に散りばめられた数々の伏線は、単なる謎解きにとどまらない深い余韻を残す。ワープロ印字の不気味なメッセージ、音声を録音したカセットテープ、そしてノートに描かれた不穏な絵。これらはすべて、過去を変えようと奔走する主人公・田村心をあざ笑うかのように置かれた罠だった。
なぜ過去は変わり、誰が救われ、誰が犠牲になったのか。タイムスリップサスペンス特有のバタフライエフェクトが緻密に描かれており、一度結末を知った後で最初から見返すと、登場人物たちの何気ない視線や行動に隠された真相に気づかされる。伏線の回収劇は見事というほかなく、物語が提示する「もし過去を変えられるとしたら、人は何を選択するのか」という倫理的問いかけが、今もなお胸を打つ。