1982年、本田技研工業株式会社が満を持して投入したVT250Fは、ライバルメーカーの2ストローク車に対抗すべく開発された超高回転型Vツインエンジンを搭載していた。最高出力35馬力を11,000rpmで発生させる技術の結晶は、サーキットやワインディングを攻める若者たちを即座に魅了。爆発的なベストセラーを記録した。
しかし、時の経過とともにバイクカルチャーの主役が移り変わるなかで、日本の二輪車製造・カスタム自動車産業の現場にも大きな変化が訪れる。当時、空冷4気筒エンジンを搭載したCBX400FやCBR400Fがカスタム市場のプレシャスモデルとして高騰する一方、水冷VツインのVT250Fは「パーツの加工が難しい」「独特のエンジン音」といった理由から、初期のカスタムベースとしてはやや異端児扱いを受けることもあった。
ところが2026年現在、状況は一変している。高騰しすぎた空冷4発モデルに対するアンチテーゼとして、あるいはVツインならではの鋭いレスポンスと甲高い高音コールに惚れ込んだコアな愛好家たちによって、VT250Fは完全に「再発見」されたのだ。近年猛烈な旋風を巻き起こしている昭和レトロカルチャーのリバイバルも、このムーブメントを強力に後押ししている。