韓非子が作中で提示した「人の本質とは何か」という問い。これは秦国のみならず、作中の世界観全体を揺るがす強烈な哲学的提起となった。王都・咸陽を訪れた彼が発した問いかけは、戦乱の世を力で収めようとする者たちの倫理的基盤に揺さぶりをかける。
戦場での流血や名将たちの死に直面してきた主人公たちに対し、韓非子が指し示した人間の相貌。それは善悪という単純な概念を軽々と超え、自己保存と利害によって動く生々しい現実だった。この問答によって、武力による征服から「法」によるシステム統治へとパラダイムが移り変わる劇的な前兆が描かれた。