アジアの暗黒街を描くビジュアルの源流をたどれば、伝説的な香港映画の黄金期に行き着く。巨匠ジョン・ウー監督が手掛け、俳優チョウ・ユンファが二丁拳銃を手にスクリーンを駆け抜けた時代だ。トレンチコートの裾を翻し、煙草の煙の向こう側で情念を燃やす。あの独特のハードボイルドな映像美こそが、現代のクリエイターたちが参照するすべての原点と言っていい。
時を経て2000年代、映画『インファナル・アフェア』が登場すると、視覚表現はより緻密で心理的な深みを増した。青白い蛍光灯の光、ビル群の無機質な影、潜入捜査官と極道組織の境界線上で揺れる孤独。こうした冷たいトーンのノワール表現は、現代のNetflixオリジナルドラマなどでも世界的なトレンドとして定着している。古くからのチャイニーズマフィアのパブリックイメージは、映像技法の進化とともに洗練され、現代アートの領域へと移植されたのだ。