直木賞作家である桐野夏生が講談社から発表した原作小説は、冷徹なまでの観察眼と重厚な筆致で極限状態の人間模様を炙り出した文学的金字塔だ。一方、映像化においては、小説の持つダークなトーンを保ちつつも、より視覚的・動的なエンターテインメントへと昇華されている。
大きな違いは、主人公・清子の描写と結末のニュアンスにある。原作の清子は生き残るための冷酷さとたくましさを静かに燃やす存在として描かれるが、文学改編映画としての本作では、狂気とユーモアが背中合わせになったドラマチックな人物像として再構築された。活字による心理描写の積み重ねと、映像による圧倒的な視覚的インパクト。双方が提示する解釈の対比こそ、この物語を二重に楽しむ醍醐味と言える。