新海誠が切り拓いてきた「青春ファンタジー」というジャンルは、時代の空気をダイレクトに吸い込みながら進化を遂げてきた。世界的な大ヒットを記録した『君の名は。』において、彼は災害の記憶と個人の祈りをドラマチックに交差させた。そして『天気の子』では、歪んでしまった世界と向き合う若者たちの切実な選択を描き出し、観客に強い問いを投げかけた。
続く『すずめの戸締まり』では、日本全国の廃墟を舞台に、過去の痛みに「戸締まり」をしていく少女の旅路を描出。社会的な課題や歴史的な悲劇を避けず、エンターテインメントの枠組みの中で堂々と提示するスタンスは、いまや彼の代名詞となった。個人的な感情の吐露から始まった物語は、いまや時代そのものを映し出す鏡へと深まりを見せている。