江戸前天ぷらの名店「みかわ是山居」の店主である早乙女哲哉氏は、天ぷらを「脱水と蒸しを同時に行う科学的調理」と位置づける。素材の水分を均一に抜きつつ、衣の内部で具材を絶妙な火加減で蒸し揚げるには、隙のない油温管理が不可欠だ。
家庭で揚げ物を行う際、油の温度は170℃から180℃に保つのが鉄則となる。食材を一度に投入すると油の温度が急降下し、衣が余計な油を吸収してしまう。鍋の表面積の半分以上の具材を一度に入れないことが、プロの仕上がりに近づくための鉄則である。和食の基本に忠実な温調こそが、素材本来の旨味を封じ込める。