歴史研究の成果が教室の現場へ波及するまでには、一定のタイムラグと慎重な手続きが存在した。大きな転換点となったのは、文部科学省が策定する学習指導要領の改訂や日本史教科書の記述見直しだ。2000年代以降、中学校や高校の歴史教科書において「1185年説」が主たる記述として採用されはじめ、現在ではほぼすべての日本史教科書が1185年を幕府成立の主軸として取り扱っている。
この変化は、歴史教育・出版業界全体にも巨大な地殻変動をもたらした。学習参考書や語呂合わせの暗記本、歴史漫画、さらには資格試験のテキストに至るまで、膨大な関連書籍の改訂作業が必要となったからだ。「いい国」に慣れ親しんだ大人向けの学び直し本や歴史解説書でも、「1185年へのシフト」を特集する企画が相次いだ。教科書の一行が変わることは、単なるテストの解答変更にとどまらず、社会全体の歴史認知を塗り替える巨大なインフラ改修でもあったのだ。