話は19世紀初頭にまで遡る。1807年、イギリスの偉大な化学者ハンフリー・デービーは電気分解という当時最新の手法を用い、それまで未分離だった純粋な金属ナトリウムの隔離抽出に世界で初めて成功した。周期表の第1族に位置するこの元素は、極めて電子を放出しやすい性質を持つアルカリ金属の代表格だ。
デービーの発見以降、物質の根本的な性質を解き明かす基礎化学の分野において、アルカリ金属と水との接触反応は常に重要な研究テーマであり続けた。空気中のわずかな水分とすら容易に反応してしまう高い反応性は、取り扱いの難しさを示す一方で、広範な化学工業における原料合成の出発点としても不可欠な存在となっていったのだ。