大作映画の型にはまったキャスティングから意図的に距離を置く選択は、一時の避難ではなかった。ここ数年の彼のキャリアを追うと、フランスやイタリアを皮切りとするヨーロッパ映画界との深い提携が軸となっていることがわかる。潤沢な予算と厳しいコンプライアンス管理に縛られたカルチャーから離れ、作家性を最優先する欧州の現場こそが、彼の乾いた美意識を再び潤したのだ。
現場スタッフとの濃密な議論、何時間にも及ぶディスカッション。かつて現場を圧倒したカリスマ性は、映画の「共同製作者」としての深い敬意へと姿を変えている。CG技術に頼り切った現代のデジタルシネマに対し、アナログで手触りのあるフィルム制作への回帰を呼びかける姿勢は、同じ志を持つ欧州の気鋭監督たちを強く惹きつけて止まない。