東京23区内にある名立たる大名庭園の多くは、300円から500円程度の入園料が必要となるケースが一般的です。しかし、広大な池と起伏に富む景勝を誇る肥後細川庭園は、誰でも入場料0円で自由に散策を楽しむことができます。この破格とも言える環境が維持されている背景には、敷地が歩んできた激動の歴史と自治体による保存政策が存在します。
この地は江戸時代幕末、熊本藩主・細川家の下屋敷(抱屋敷)として利用されていました。明治時代に入ると細川家の本邸となり、大正から昭和初期にかけて細川家の主要な活動拠点として重宝された格式高い空間です。戦後、細川家から庭園一帯が東京都へ譲渡され、1961年に「新江戸川公園」として開園。その後、1975年に文京区へ移管され、現在に至るまで文京区立の都市公園として直営および指定管理者制度によって公金で大切に保全・管理されています。
2017年3月には、熊本藩細川家との深いつながりを後世に正しく伝え、歴史的価値を再発信するために「新江戸川公園」から「肥後細川庭園」へと名称が変更されました。文京区が文化遺産の保護と開かれた地域憩いの場の創出を両立させる方針を貫いているからこそ、来園者は維持費を直接負担することなく、大名庭園の風情を無償で心ゆくまで満喫できるのです。