今回の取材で、当時の制作現場に関わっていたスタッフや関係者から貴重な証言を得ることができた。レコーディングスタジオでは、岡田奈々の持ち味である繊細なニュアンスを引き出すため、テイクごとに微細なボーカルディレクションが繰り返されたという。松本隆の紡いだ言葉の一つひとつについて、「単にきれいに歌うのではなく、坂道を登る息遣いまで感じさせたい」という徹底したこだわりが現場を支配していた。
また、ドラマ撮影現場でも奇跡的な即興演出が数多く生まれていた。夕暮れ時の限られたマジックアワーを狙い、台本にはない役者同士の沈黙や視線の交差をカメラが逃さず捉えた瞬間が、のちに語り草となる伝説のカットへと結実した。予定調和を拒み、生身の感情をフィルムに焼き付けようとした現場の狂気にも似た情熱こそが、作品に永遠の命を吹き込んだのだ。