住宅の修理業者や自動車・自転車整備の最前線を取材すると、一般ユーザーによる潤滑剤の誤用がいかに日常化しているかが浮き彫りになります。
都内近郊で鍵と防犯の緊急駆けつけサービスを運営する技術担当者は、現場の実態を次のように明かします。「『鍵が刺さらない、回らない』という出張要請の約3割は、住人の方が自らオイルスプレーを吹き込んだことによる二次被害です。分解洗浄で復旧できればまだ安く済みますが、ディンプルキーなど複雑な構造のシリンダーは内部洗浄が難しく、丸ごと交換にならざるを得ません」
また、建具調整を行うサッシ職人の元にも、「引き戸が重くなったので5-56を塗ったら、レールが真っ黒になって余計に動かなくなった」という相談が殺到しています。木製の敷居やプラスチック製戸車に油分が付着すると、繊維に油が染み込んで木が膨らんだり、ホコリを巻き込んで戸車のベアリングを焼き付かせたりする結果を招きます。
SNS上でも、「ファンの異音に5-56を吹いたらプラスチックの羽が破断して破片が飛び散った」「ゲーム機のコントローラーのスティックに吹きかけたら基板ごと反応しなくなった」といった手記のような生々しい失敗談が絶えず共有されています。製品自体が優秀であるがゆえに、「どんな場所にも効く魔法の薬」と過信してしまうユーザー心理の隙が、重大な物損事故へと直結しています。