おでんの主役でありながら、最も調理に時間がかかる大根。芯まで出汁を浸透させるためには、調理科学に基づいたおでんの大根に味を染み込ませる裏技を実践することが最短ルートです。大根の細胞壁は強固で、生のまま煮汁に入れても浸透圧の壁に阻まれて味が奥まで到達しません。
まず厚さ2.5〜3cmに輪切りにした大根は、皮を厚め(3〜4mm程度)に剥き、角を削る「面取り」と、片面に深さ1/3程度の「十字の隠し包丁」を入れます。ここからがプロの裏技です。米のとぎ汁で30分下茹でする伝統的手法に加え、現代の調理現場で支持されているのが「冷凍大根」または「電子レンジ加熱」の活用です。切った大根をラップに包んで600Wのレンジで約6〜8分加熱するか、一度一晩冷凍庫で完全に凍らせてから解凍せずに煮汁へ投入します。凍結によって細胞内の水分が膨張し細胞壁が破壊されるため、スポンジのように急速に出汁を吸い込む構造へ変化します。
また、透き通ったつゆを維持するためのおでんの出汁が濁らないコツは、徹底した油抜きにあります。さつま揚げ、厚揚げ、がんもどきなどの揚げ物は、熱湯を回しかけるか、沸騰した湯で1分ほど茹でこぼして表面の酸化した油を完全に除去してください。このひと手間を怠ると、油が出汁に溶け出して乳化現象を引き起こし、白濁と嫌な油臭さの原因になります。