『誕生』の発売日は1992年3月4日。中島みゆき通算27作目のシングル(『誕生 / Maybe』の両A面)としてリリースされました。本作は東宝映画『奇跡の山 さよなら、名犬平治』(監督:水島総、主演:三浦友和)の主題歌として書き下ろされた経緯を持ちます。過酷な雪山を舞台に命の尊厳と絆を描いた映画の世界観と、中島みゆきが紡いだスケールの大きなメロディが見事な調和を見せました。
当時の制作秘話を振り返ると、中島みゆきは映画の劇伴的な役割にとどまらず、普遍的な人間の生と死のドラマを見据えて筆を執ったと伝えられています。同曲はシングル発売から約7カ月後の1992年10月7日にリリースされた通算20作目のオリジナルアルバム『EAST ASIA』のラストを飾るトラックとして収録されました。同アルバムには『浅い眠り』や表題曲『EAST ASIA』『糸』といった屈指のマスターピースが並んでおり、その掉尾を飾る『誕生』はアルバム全体の思想的到達点としての重責を担っています。
中島みゆきのプロフィール(1952年2月23日生まれ、北海道札幌市出身)を振り返っても、1970年代のデビュー以降、80年代の劇的な作風転換、そして90年代初頭の本作に至る時期は、人間描写の円熟味と哲学的深みが頂点に達した極めて重要なフェーズであったことが分かります。