今期最大の社会現象となったのが、脚本家・宮藤官九郎が手がけた『不適切にもほどがある』だ。主演の阿部サダヲが演じたのは、昭和61年から令和へとタイムスリップしてしまうスパルタ体育教師。ハラスメント意識の乏しい昭和の「昭和オヤジ」が、コンプライアンスに過剰反応する現代社会へ乗り込み、不適切な発言を連発しながらも本質的な問いを投げかける姿勢が、世代を超えた共感を呼んだ。
「昔は良かった」という安易なノスタルジーに浸るのではない。令和の生きづらさや過剰な自粛ムードに対する批評性を、ミュージカル仕立ての演出という斬新な手法で包み込んだ。阿部サダヲの縦横無尽な芝居とコミカルな歌唱は視聴者の度肝を抜き、コンプライアンス社会で息苦しさを感じる多くの人々に笑いと救いをもたらした。まさにテレビドラマだからこそ提示できた、現代への強烈な回答である。