多くの読者や視聴者の間で囁かれ続けているのが、実在する名門企業・三菱重工業との類似性だ。H-IIAやH3といった日本の主力大型ロケット開発を一手に担い、防衛から重機械まで裾野を広げる重工業の頂点。その重厚な企業風土や事業スケールは、劇中の描写に濃厚なリアリティを与えている。
元銀行員というキャリアを持つ池井戸潤の筆致は冷徹だ。財務諸表の行間から滲み出る組織の力学、稟議書の承認印一つに翻弄される開発者の焦燥感。綿密な取材に裏打ちされたリアリズムがあるからこそ、架空の企業物語が現実の経済ニュースと地続きの迫力を持って迫ってくる。