セクシュアリティの多様性を語るうえで、最も混同されやすいのが「Aセク(アセクシュアル)」と「ノンセクシュアル」の定義だ。両者の違いを理解することは、当事者が抱える違和感の正体を解き明かす第一歩となる。
アセクシュアル(Asexuality)は、基本的に「他者に対して性的な惹かれを経験しない」指向を指す。一方で、恋愛感情の有無については人によってグラデーションが存在し、恋愛感情すら抱かない「アロマンティック」なアセクシュアルもいれば、性的な欲求はなくても誰かに恋心を抱く「ロマンティック」なアセクシュアルも存在する。
対して「ノンセクシュアル」は、主に日本独自の文脈で用いられてきた言葉であり、「他者に対して恋愛感情は抱くものの、性的な関係は望まない」セクシュアリティを意味する。つまり、恋愛感情を前提とするかどうかが、アセクシュアル全般とノンセクシュアルを隔てる大きな論点となるわけだ。こうした細やかな区別は、単なる言葉遊びではない。自分自身の感情に名前をつけ、孤立感を解消するための切実な足場として機能している。