現在のような宿舎不足を招いた最大の引き金は、2011年以降に本格化した財務省の「国家公務員宿舎削減計画」にあります。その決定的な契機となったのが、2011年秋に社会問題化した「朝霞公務員宿舎(埼玉県朝霞市)の建設問題」でした。東日本大震災の直後、復興増税が国民に求められる中で、約105億円を投じて建設中だった大型公務員宿舎の存在がメディアで集中砲火を浴び、当時の野田内閣が建設凍結・中止を表明する事態に発展したのです。
世論の強い批判を受けた政府は、「公務員宿舎の削減基本方針」を策定。国有財産の有効活用と行財政改革の目玉として、全国に約21.8万戸存在した宿舎を約5年で25%(約5万6,000戸超)削減するという前代未聞の大ナタを振るいました。特に批判の矢面に立たされた東京23区内の好立地宿舎は集中的に廃止リストへ放り込まれました。
実際に売却された廃止リストには、不動産業界が色めき立つような超一等地が並んでいました。渋谷区の「代官山宿舎」跡地や、港区「南青山宿舎」、六本木・麻布周辺の合同宿舎群など、民間に払い下げられれば坪単価数千万円で取引されるプレミアム用地が次々と一般競争入札にかけられ、高級タワーマンションや商業施設、外資系ラグジュアリーホテルへと姿を変えていきました。この売却益は復興財源などに充てられたものの、組織の現場には「宿舎の総数が足りず、異動のたびに住居難民になる」という深刻な副作用を遺すことになったのです。