美術史家や世界中の旅行者が最も懸念していたのが、ビザンティン美術の至宝であるキリスト教モザイク画の扱いだ。地上階のアプシスに輝く聖母子像は、礼拝時間になると遠隔操作の電動カーテンによって覆い隠される。祈りの空間に具象画を置かないイスラムの教義と、人類共通の文化遺産を公開し続ける義務の間で下された苦肉の策である。
一方で、2階ギャラリーへ登った観光客には嬉しい誤算もある。「デイシス(祈りのモザイク)」をはじめとする著名な壁画群は、カーテンで隠されることなく間近で鑑賞可能だ。金箔ガラスが放つ幽玄な輝き、皇帝たちの寄進を描いた精緻な描写は、地上階から遠ざけられた観光客に対する唯一にして最大の救済措置となっている。
世界遺産を管轄するユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、モニュメントの普遍的価値の維持についてトルコ当局と継続的な対話を続けている。建物の構造的な負荷軽減と宗教空間としての尊厳をいかに両立させるか。大理石の床に刻まれた無数の傷跡が、遺産保護と信仰の衝突がいかに困難な妥協の産物であるかを物語る。