裁判員裁判における最大の法的焦点は、八木原被告および共犯者たちに「強盗致死罪」が適用されるのか、それとも「傷害致死罪(および事後強盗・窃盗罪)」にとどまるのかという点です。日本の刑法において、この二つの罪の間には超えがたい量刑の壁が存在します。
強盗致死罪(刑法240条後段)の法定刑は「死刑または無期懲役」のみです。酌量減刑が認められた場合でも懲役6年以上となり、実務上は極めて重い無期懲役判決が下されるケースが一般的です。一方、傷害致死罪(刑法205条)の法定刑は「3年以上の有期懲役(上限は20年、加重で30年)」であり、その量刑相場は懲役8年から15年程度に収まる傾向があります。
検察側が強盗致死罪の成立を立証するためには、「暴行を加えている最中、あるいは暴行に着手する前に、長谷さんの財物を奪う意思(不法領得の意思)を共謀していたこと」を証明しなければなりません。報道や関係者の供述によると、当初は「男女間の交際トラブルに対する言いがかりや私的制裁」として始まった暴行が、長谷さんが抵抗不能に陥る中で「金を取れるのではないか」という略奪へと発展した形跡が窺えます。
弁護側は「暴行は金品目的ではなく、金品を奪ったのは暴行の終了後、あるいは突発的な窃盗に過ぎない」として強盗致死罪の成立を頑なに否認し、傷害致死罪や窃盗罪の限度に押しとどめる主張を展開すると予測されます。札幌地裁の裁判員が、この過激化した暴行と金品強奪の因果関係をどのように評価するかが、懲役刑の上限か無期懲役かを分ける決定打となります。